4. かやぶき屋根の維持はたいへん
多摩丘陵(たまきゅうりょう、ちょっと小高い丘が連なる地域。町田市もその一部)では、昭和中頃まで農村の風景が広がり、多くの民家はかやぶき屋根だった。平地では米や野菜を栽培して、丘の斜面から尾根にかけては屋根の材料に使うカヤ(ススキ)をたくさん生やしておく場所(カヤ場)があちこちにあったんだ。十二月ごろにススキを刈り取り、家の屋根裏に保管して、屋根のふき替えに必要な量を数年がかりで集めたんだって。
瓦(かわら)の屋根と違って、かやぶきの屋根は時間と共に少しずつ傷むから、およそ30年ごとにふき替えが必要で、江戸時代以降、東北地方から来た出稼ぎの職人たちや地元の職人、そして近所の人たちもみんな一緒になって、今年はあの家、来年はこの家、と順番にふきかえの作業をしていたんだ。
今では、かやぶき屋根の家はほとんどなくなってしまって、カヤ場もなくなってしまった。
だから今、こうしたかやぶきの屋根はすごく貴重なんだよ。