8. 龍と日本人
この鐘は昭和47年(1972)に作られたもの。龍が2箇所にいるよ。探してみよう。
龍の姿は、はるか昔の弥生(やよい)時代から古墳(こふん)時代の遺跡から出土する鏡にも描かれている(!)ので、1800年ほど前には日本に伝わっていたと考えられているよ。その頃は日本でようやく農耕がはじまった時期。龍はそのころから、水源を守り、空から雨を降らせる水の神様だと信じられてきたよ。雷を落とす役割もあるんだって。雨はわたしたちが食べる作物を育てる重要なものだから、昔の日本人は龍をとても重要な神様として感じてきた。たとえば「雲が龍の形に見えると縁起がいい」・・・など、日本人は様々なところに日常的に龍を見出し、造り、描き、願いをたくしてきたんだ。実在しない想像上の生き物だけど、日本人の生活にはとても身近な存在なんだね。
ちなみに、ここ野津田薬師堂では、この鐘の龍だけでなく、お堂のあちこちに龍が描かれたり彫られたりしているよ。さっきみっけた卍の柱の上にも2匹の龍が。またその近くの梁(はり)にも2匹。さらには賽銭箱(さいせんばこ)の上の天井にも1匹。また、賽銭箱の上には弁天様も描かれているんだけど、それも水の神様なんだ。(昔は薬師池の太鼓橋の近くに弁天様のお堂があったんだって。)
薬師池はもともと農業用水を確保するためのため池だから、龍といい弁天様といい、水にまつわる神様を描いたりまつったりして、大切にしてきたんだね。
さらに薬師堂内部の天井には、明治30年(1897)に狩野派の絵師 狩野信矩によって描かれた天井絵(天女と並んでここにも龍が描かれている)もあるよ。普段は見られないけど11月3日(文化の日)の前後に一般公開されるので、ぜひ見にきてね。